[箱庭]
小さな庭に響き渡る
ここには幼い二人しかいない
小さな箱の中に作られた小さな庭
二人きりのここで彼らは育った
お互いがいるだけで幸せそうだった
他に望むものなどあるわけがなかった
彼らのまだ幼い心には
水鏡に映したように
互いの姿しか見えていなかったのだから
一体どうして見つけてしまったのか
彼らはこの庭の出口を見つけてしまった
扉に手をかけた瞬間
お互いの姿は見えなくなってしまった
それは光に溶けたのか
それとも闇に紛れたのか
戻る術を持たなかった彼らは
それでも手を繋いでいた
例え姿は見えなくとも
互いの存在を確認するように
しかし
不安を感じていたのだろうか
目先の力にすがりついた
世の中には
役に立たない力もあるものだ
渇望の果てに手に入れた力は
『破壊』
それは容赦なく繋がれた手を引き裂いて
互いの声すら届かない所に
彼らを追いやった
引き裂かれた魂は
力の先に何を望む?
『私は何を求めているのだ。
強大な力と権力を手にして』
『俺は何が欲しいんだ。
強大な力と権力を手にして』
明るい笑い声
互いを呼ぶ声
互いを求める声
緑に溢れた小さな庭は
今や荒野と化して
それでもまだ待っている
今もどこかで待っている
遠いあの日の情景が
またここに戻ってくることを
THE END