[最高の贈り物]-01-
いよいよ明日だ。
私は新しく変えたばかりのカレンダーにつけた印を見つめた。新年から一日ずつつけた印は今日――ちょうど5の数字で空白になっている。その数字をしばらく見つめると机の上に転がったペンを取り上げ、その数字の入っている枠全体を取り消すように大きく斜線を二つ重ねた。
どこか不安になってクローゼットを開ける。そこには綺麗な包装紙に包まれた箱がきちんと置いてあった。
――ああ、よかった。
小さくため息をついてから何を不安がっていたのだと自嘲が漏れる。
明日のためにこのプレゼントを買い込んできたのはすでに一週間も前。それなのに、なくなってはいないかと、実は買いそびれていたのではないかと不安になって一日に何度もクローゼットを開けては確認している。こんなことをしていてはホームズに知られてしまうと思いながらも、私の不安は消えることはなかった。
現に、今日はもう少しでホームズに知られてしまうところだったのだ。ノックの音に気付かなかったのがいけなかった。クローゼットを閉めてふと振り返ると戸口で不思議そうな顔をした彼が立っていたのだ。
『まさか隠れて猫でも飼っているんじゃないだろうね?』
そう茶目っ気を込めて尋ねてきたが、聞かれた私の方は一瞬口を開けたまま固まってしまった。下手な言い訳を返すと彼は一瞬納得したようなそぶりを見せたが、明らかにまだ納得してはいないだろう。目を見ればわかる。それがわからないほど彼との付き合いは、短くも浅くもないのだから。むしろ、彼はわかっていて聞かなかったのだろう。
毎年繰り返されるようになった行事を忘れているわけではあるまい。それでもあえて聞かないのは彼の性格もあるし、こちらを思ってくれていることもあるだろう。そして毎年、まるで予想がつかなかったかのように手を挙げて驚いてくれる。
――来年こそは、本当に驚くように細心の注意を払わないといけないな。
そんなことを考えながら最後にもう一度目の前にある箱の存在を確認してクローゼットを閉めると、そっとベッドの中へともぐりこんだ。