[RE:BIRTH]-01-


 聖戦が終わって四ヶ月。
 自分たちの体が元通り動くようになって三ヶ月が過ぎた。

「まるで地獄だ……」

 そう呟いたのはここの守護者サガ。そして大きなため息を一つつく。
 ソファに座って本を読んでいた時、ふいに部屋から出てきたカノンは何も言わず双児宮を出ていった。
 その姿に声もかけられなかった自分。

「あいつはまだ恨んでいるんだろうな……」

 自分の気持ちを抑え切れなくて罪を犯してしまった過去。

 あれから十五年。まだそれを引きずっている自分。そしてその日以来、言葉を交わすことすらなくなった弟。

 いや、当時はまだよかった。喧嘩であるにしろ、言葉を交わしていたのだから。

 だが、今は……。


「こんなことなら、共に住むんじゃなかったな……」

 わかっている。この状態を招いたのは自分であることも。
 それでも望んでしまったのだ。たとえ想いが届かなくても共にいられるのならばよいと。

 しかし、今のこの状態は拷問のような状態で。

 早く抜け出したい。
 しかしここから出ることは許されない。

「カノンは……?」

 ふいにそう思った。

 カノンはどう思っているのだろう。
 共に暮らすこの時をどう感じているのだろう。

 ここに戻ってきてからの行動を考えてみる。他の黄金聖闘士とはうまくやっているようだ。それは皆の態度を見れば一目瞭然。しかし自分と言葉をかわすことはない。

 聖域の中でこの双児宮だけが時間を止めている。

 二人の間の時間は淀み、流れることはない。
 それはまるで血の池地獄に身を収めているようで、際限なく自分を苦しめていく。

「一体、どうすれば……」

 そう言って読んでいた本を閉じると、サガは静かにその身をソファに横たえた。


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